2026.09.01
【保存版】冷凍冷蔵倉庫のノンフロン化で押さえたい建築ポイント|自然冷媒・設備更新・省エネを解説
はじめに
冷凍冷蔵倉庫の新築・建替えや、老朽化した冷凍冷蔵設備の更新を検討する際、「これからの冷媒はどう考えればよいのか」「ノンフロン化する場合、建物側にも対応が必要なのか」と悩む方も多いのではないでしょうか。
冷凍冷蔵設備では、これまでさまざまなフロン類が冷媒として使用されてきました。しかし、オゾン層保護や地球温暖化対策を背景に、フロン類を取り巻く制度は段階的に見直されており、現在ではCO2やアンモニアなどの自然冷媒を利用した設備も選択肢として広がっています。
ただし、冷凍冷蔵倉庫のノンフロン化は、単に冷凍機を交換すれば完了するものではありません。
必要な温度帯や冷却能力、建物の断熱性能、電気容量、設備機器の配置、配管ルート、換気・安全対策、メンテナンススペース、工事中の保管体制など、建物と設備を一体で検討することが重要です。
本記事では、冷凍冷蔵倉庫の新築・建替え・設備更新を検討している企業の経営者や施設担当者に向けて、ノンフロン化・自然冷媒化を考える際に押さえておきたいポイントを、工場・倉庫建設の視点から解説します。
Factory Laboでは、工場・倉庫建設で培った経験をもとに、お客様の事業内容や保管物、必要な温度帯、物流動線などを確認しながら、冷凍冷蔵倉庫の建築計画をお手伝いしています。
冷凍冷蔵倉庫で進むフロン類からの転換
フロン類が見直されている理由
冷凍・空調設備の冷媒として使用されてきたフロン類の中には、オゾン層を破壊する性質や、高い地球温暖化係数(GWP)を持つものがあります。
日本では、オゾン層保護法などに基づいてHCFCの生産・消費が段階的に削減され、2020年までに全廃されています。
その後、オゾン層を破壊しないHFCが広く使われるようになりましたが、HFCの中にも高い地球温暖化係数を持つものがあります。そのため、モントリオール議定書のキガリ改正に基づき、HFCについても生産・消費量の段階的な削減が進められています。
こうした流れを踏まえると、冷凍冷蔵倉庫を新築・建替えする場合や、既存の冷凍設備を更新する場合には、現在必要な性能だけでなく、将来の冷媒供給や環境対応まで含めて設備を検討することが重要です。
既存のフロン設備には適切な管理が必要
既存の業務用冷凍冷蔵機器に対象となるフロン類が使用されている場合は、フロン排出抑制法に基づいた適切な管理が必要です。
対象となる第一種特定製品では、設置・使用環境の維持、機器の点検、漏えいが確認された場合の対応、点検・整備履歴の記録、廃棄時のフロン類の回収などが求められています。
そのため設備更新を検討する際は、単に機器の古さを見るのではなく、現在使用している冷媒の種類、設備の状態、修理履歴、今後の維持管理なども整理しておくことが大切です。
ノンフロン・自然冷媒とは
ノンフロン冷媒とは、一般的にフロン類を使用しない冷媒を指します。
冷凍冷蔵設備では、自然界にもともと存在する物質を利用した「自然冷媒」が採用されるケースがあり、代表的なものとしてCO2(二酸化炭素)やアンモニアなどがあります。
CO2冷媒
CO2は地球温暖化への影響が比較的小さく、冷凍冷蔵設備で利用されている自然冷媒の一つです。
一方で、高い圧力を扱うシステムとなるため、設備の設計・施工・保守については、対応するメーカーや専門事業者との連携が重要になります。
アンモニア冷媒
アンモニアは冷却性能に優れ、産業用の大型冷凍設備などで長く利用されている自然冷媒です。
ただし、毒性などの特性を持つため、設備の規模や方式に応じて、漏えい検知、換気、設備配置などの安全対策を検討する必要があります。
冷媒だけで設備を決めないことが重要
自然冷媒には環境負荷低減のメリットがありますが、「自然冷媒であればどの施設にも最適」というわけではありません。
必要な温度帯、冷却能力、施設規模、入出庫量、外気条件、設備配置、維持管理方法などによって、適した冷凍システムは異なります。
そのため、冷媒の種類だけを先に決めるのではなく、施設全体の運用条件を整理したうえで設備を検討することが重要です。
ノンフロン化を考えるときの6つの建築ポイント
冷凍冷蔵倉庫のノンフロン化・自然冷媒化では、冷凍機器だけでなく、建物側の条件もあわせて確認する必要があります。
1.必要な温度帯と冷却能力を整理する
最初に確認したいのが、「何を、何℃で、どれだけ保管するのか」です。
冷蔵・冷凍といっても、保管する商品によって必要な温度帯は異なります。また、庫内面積だけでなく、商品の入庫時温度、1日の入出庫量、扉の開閉回数、外気温などによって必要な冷却能力も変わります。
設備の能力が過大であれば初期費用やエネルギー消費が増える可能性があり、反対に能力が不足すれば必要な温度を安定して維持できません。
そのため、建築計画の初期段階で実際の運用条件を整理することが重要です。
2.断熱性能を冷凍設備と一緒に考える
冷凍冷蔵倉庫では、冷凍機の性能だけでなく、建物の断熱性能もエネルギー消費に大きく影響します。
壁・天井・床の断熱性能や気密性、扉の仕様、荷捌きスペースとの関係などを適切に計画することで、外部からの熱の侵入を抑え、冷却設備への負荷を軽減できます。
特に低温倉庫では、床下への冷熱の影響や結露、凍上などについても検討が必要です。
3.電気容量と受変電設備を確認する
冷凍冷蔵設備は、施設の中でも大きな電力を使用する設備の一つです。
既存倉庫の設備更新では、新しい冷凍機を設置するスペースが確保できても、受変電設備や電気容量が不足している場合があります。
キュービクルや幹線設備などの増強が必要になれば、工事費や工期にも影響します。
冷凍設備だけを先に選定するのではなく、建物全体の電力計画と一緒に確認することが大切です。
4.設備配置・配管・メンテナンス動線を確保する
冷凍設備は、設置して終わりではありません。
長期間安定して使用するためには、点検、修理、部品交換、将来の設備更新などを行えるスペースを確保する必要があります。
機械室や室外機の配置、冷媒配管ルート、機器の搬入経路、メンテナンス時の作業スペースなどを建築段階から検討しておけば、完成後の維持管理を行いやすくなります。
5.冷媒の特性に応じた安全対策を考える
自然冷媒の種類によっては、高圧、毒性、可燃性などに対する安全上の配慮が必要になる場合があります。
また、使用する設備の種類や能力などによって、高圧ガス保安法をはじめとする関係法令や必要な手続きが異なる場合があります。
漏えい検知、換気、設備配置などについては、設備メーカーや専門事業者、必要に応じて関係行政機関と確認しながら計画します。
6.設備更新中の事業継続を考える
既存の冷凍冷蔵倉庫を稼働させながら設備更新を行う場合、工事期間中の商品をどこに保管するかも重要な課題です。
設備停止期間、仮設設備の必要性、外部倉庫への一時移動、工事区画と物流動線の分離などを事前に整理する必要があります。
設備費だけではなく、工事中の事業への影響まで含めて計画することが、スムーズな更新につながります。
設備更新・改修・建替え、どれを選ぶべきか
ノンフロン化を検討する方法は、大きく「既存設備の更新」「既存建物の改修」「新築・建替え」に分けられます。
既存設備を更新する場合
建物の構造や断熱性能に大きな問題がなく、設備の老朽化が主な課題であれば、冷凍冷蔵設備を中心に更新する方法があります。
ただし、電気容量、設備スペース、配管、既存断熱材の状態などによっては、建物側の追加工事が必要となる場合があります。
既存倉庫を改修する場合
既存建物を利用しながら断熱性能や冷却設備を見直す方法もあります。
一方で、柱・梁の位置、天井高、床の状態、設備スペースなど、既存建物ならではの制約を受けます。
改修費だけを見るのではなく、今後どのくらいの期間施設を使用するのか、将来的な保管量や物流量に対応できるのかまで含めて判断することが重要です。
新築・建替えを行う場合
建物そのものの老朽化が進んでいる場合や、保管能力の拡大、物流効率の改善、自動化などを同時に進めたい場合は、新築・建替えも選択肢になります。
新築であれば、必要な温度帯や設備を前提として、断熱性能、電力設備、荷捌きスペース、車両動線、庫内レイアウトなどを一体的に計画できます。
設備の更新時期だけでなく、建物そのものの状態や将来の事業計画まで考えて判断することが大切です。
実際の施設計画を検討する際は、Factory Laboの工場・倉庫の施工事例も参考にしてください。
ノンフロン化の費用を左右するもの
冷凍冷蔵倉庫のノンフロン化に必要な費用は、施設の条件によって大きく異なります。
費用を左右する主な要素には、冷凍冷蔵機器本体だけでなく、配管工事、電気工事、受変電設備、安全設備、既存設備の撤去、フロン回収、断熱改修、建築工事、制御・監視システムなどがあります。
また、既存倉庫を稼働させながら工事する場合には、一時的な保管場所や仮設設備が必要となる可能性もあります。
そのため、設備本体の価格だけで比較するのではなく、建築・設備・工事期間・維持管理まで含めた総合的な費用で検討することが重要です。
ノンフロン化・設備更新の進め方
1.現在の設備を確認する
まずは、既存設備の冷媒種類、設置年、能力、稼働状況、修理履歴などを整理します。
あわせて、建物の築年数や断熱性能、電気設備、今後必要となる保管能力も確認します。
2.将来の事業計画を整理する
現在必要な能力だけではなく、今後の保管量や取扱商品の変化、物流量、自動化の予定なども確認します。
数年後に増築や再度の設備更新が必要にならないよう、中長期的な事業計画から逆算することが重要です。
3.建物と冷凍設備を一体で検討する
必要な温度帯や冷却能力をもとに、冷媒・冷凍設備だけでなく、断熱性能、設備配置、電力、搬出入動線などを一緒に検討します。
4.法令・安全対策を確認する
設備仕様に応じて、フロン排出抑制法、高圧ガス保安法、消防法、建築基準法など、関係する法令や手続きを確認します。
5.工事計画と運用切替を整理する
既存施設の場合は、設備停止期間や商品の移動、工事範囲、安全動線などを確認し、事業への影響をできるだけ抑えられる工程を検討します。
自然冷媒機器で補助制度を利用できる場合もある
自然冷媒を利用した冷凍冷蔵設備については、国や自治体による導入支援制度が設けられる場合があります。
2026年度には、環境省において、冷凍冷蔵倉庫、食品製造工場、食品小売店舗などを対象に、脱炭素型自然冷媒機器の導入を支援する事業が実施されています。
ただし、対象となる設備、公募期間、補助条件などは年度によって変更されます。
また、制度によっては交付決定前の契約や発注が対象外となる場合もあるため、補助制度の利用を検討する場合は、設備や建築計画を進める早い段階で最新の公募内容を確認することが重要です。
ノンフロン化は施設全体を見直す機会
自然冷媒への転換は、環境負荷を低減するための取り組みですが、冷凍設備の交換だけで考える必要はありません。
老朽化した設備を更新するタイミングで、断熱性能、扉、庫内レイアウト、物流動線、照明、省エネルギー設備などをあわせて見直すことで、施設全体のエネルギー効率や作業効率を改善できる可能性があります。
特に冷凍冷蔵倉庫は長期間使用する施設です。
初期費用だけではなく、電気代、メンテナンス費、設備更新、将来の事業拡大まで含めたライフサイクル全体で施設計画を考えることが重要です。
よくある質問
既存のフロン設備はすぐに交換しなければなりませんか?
既存設備の使用可否は、使用している冷媒や設備の状態などによって異なります。
対象となるフロン類を使用した業務用冷凍冷蔵機器については、フロン排出抑制法に基づく適切な管理が必要です。
老朽化や故障リスク、修繕費、冷媒の供給環境、電気代などを確認しながら、設備更新の時期を検討しましょう。
自然冷媒にすれば必ず電気代は下がりますか?
必ずしも冷媒を変更するだけで電気代が下がるとは限りません。
冷凍設備の効率だけでなく、必要な温度帯、建物の断熱性能、扉の開閉、外気条件、入出庫量、運用方法など、さまざまな要因がエネルギー消費に影響します。
設備単体ではなく、建物全体で省エネを検討することが重要です。
設備更新と建替えのどちらがよいですか?
既存建物の築年数、構造、断熱性能、電気容量、必要な保管能力、将来の事業計画によって判断は異なります。
設備更新・改修・建替えそれぞれの初期費用だけでなく、今後の維持管理費や設備更新、事業拡大まで含めて比較することが重要です。
どの段階で建築会社へ相談すればよいですか?
冷凍設備の仕様を完全に確定する前の段階から相談することをおすすめします。
保管するもの、必要な温度帯、保管量、入出庫量などが分かれば、設備メーカーとも連携しながら、建物、断熱、電力、設備配置、物流動線などを含めた計画を整理できます。
まとめ
冷凍冷蔵倉庫のノンフロン化・自然冷媒化は、単なる冷凍機の交換ではありません。
必要な温度帯や冷却能力に加えて、断熱性能、電気容量、設備配置、配管、メンテナンス性、安全対策、工事期間中の運用など、建物全体を含めて検討する必要があります。
また、設備や建物の老朽化が進んでいる場合には、設備更新だけでなく、建物の改修や建替えまで含めて比較することで、長期的に使いやすい施設計画につながります。
冷媒や関連制度は今後も変化する可能性があるため、実際の計画時には設備メーカーや専門事業者、関係行政機関などから最新情報を確認しながら進めることが重要です。
冷凍冷蔵倉庫の新築・建替え・設備更新をご検討の方へ
冷凍冷蔵倉庫の計画では、「どの冷媒を使うのか」だけではなく、何を何℃で保管するのか、どの程度の入出庫があるのか、将来どのように事業を展開していくのかまで整理することが重要です。
Factory Laboでは、工場・倉庫建設で培った経験をもとに、お客様の事業内容、保管物、必要な温度帯、設備条件、搬出入動線などを確認しながら、冷凍冷蔵倉庫の建築計画をお手伝いします。
- 老朽化した冷凍冷蔵倉庫を建替えたい
- 既存倉庫を冷凍冷蔵倉庫へ改修したい
- 自然冷媒を採用した新しい倉庫を検討したい
- 設備更新と建替えのどちらが適しているか相談したい
- 土地選びの段階から相談したい
といった計画初期段階からでもご相談いただけます。
※必要な設備、安全対策、許認可、法令上の手続きなどは、使用する冷媒、設備能力、建物規模、用途、建設地等によって異なります。具体的な計画については、設備メーカー、専門事業者、関係行政機関等へ最新の要件をご確認ください。





